彼氏に「生でしたい」と言われたとき、まっさきに気になるのが妊娠の可能性でしょう。多くの女性は「安全日なら大丈夫だよね?」と思うかもしれません。
しかしその安全日がいつになるのか、どれくらいの確率で妊娠をふせげるのか、きちんと知っていますか?逆に妊娠しやすいと言われる危険日が、自分は毎月何日になるのか把握しているでしょうか。
彼の願いをかなえたい気持ちもわかるけれど、何よりも優先すべきは自分のカラダです。望まぬ妊娠を避けるためにも、安全日や危険日の期間・定義・仕組みをしっかり理解しておきましょう。
妊娠しにくいとされる「安全日」とは
安全日を知る前に、基礎的な妊娠のメカニズムを確認しましょう。
【妊娠のメカニズム】
1:排卵
2:受精
3:着床
4:出産
この中で「2:受精」がしにくい日を「安全日」と呼びます。
受精しなければ妊娠は成立しません。だからこそ「妊娠する可能性が低い日」とも呼ばれているわけですね。
安全日でも100%避妊できるわけではない!
結論になってしまいますが、そもそも安全日など存在しません。なぜなら「100%妊娠しない日」などないからです。
その理由を知るために、まずは「卵子と精子の寿命」を覚えておきましょう。
【卵子の寿命】
・12時間~24時間
【精子の寿命】
・2日~7日
卵子の寿命がとても短いとおどろかれた人もいるかもしれません。理屈的には、この卵子の生存期間である24時間以内に受精しなければ妊娠はふせげます。そう聞くと安全日だらけな気もしますね。
しかし卵子がいつ排卵されるのか・精子が子宮内で何日生きるのか、特定するのはむずかしいのです。女性はほんの少しのストレスでも、ささいな病気でも排卵時期はズレます。
その数日のズレで、安全日だと思っていた日が安全でなくなる可能性は大いにあるのです。この排卵時期については、次の章で詳しく説明しましょう。
生理開始1日目でも妊娠の可能性はある
「卵子がいつ排卵されるのか特定はむずかしい」と言いました。しかし次の生理がきたときに、先月の排卵日がいつだったのか答え合わせができます。
排卵日は生理開始日の14日前です。
・生理開始日から排卵日まで:人それぞれバラバラ
・排卵日から生理開始日まで:14日間
生理開始日から排卵日まで個人差があるからこそ、28日周期・31日周期などズレがあるわけですね。「今月は生理が遅れた」というのも、排卵する時期が遅れたためです。
では生理開始1日目ならどうでしょうか。妊娠する可能性などないように感じます。しかしそれでも可能性はゼロではありません。
・ストレスによって排卵が1週間早まった
・子宮内の精子が1週間生き残った
限りなく低い確率ではありますが、この2つの要因が偶然起これば妊娠はするでしょう。
あなたは数日後に起こる出来事を予想してストレスを調節できますか?精子がまだ生きてるかどうか判断できるでしょうか。答えはあきらかにNOでしょう。だからこそ安全日などなく、生理1日目でも妊娠する可能性がゼロにはならないのです。
逆に妊娠しやすい日は「危険日」と呼ばれる
「危険日」とは妊娠しやすい日、つまり受精が起こりやすい日を言います。卵子が生きてるあいだに精子と出会いやすい日です。
ただし排卵日当日が1番の危険日かというとそうではありません。ほんとうの危険日は排卵1~2日前です。
なぜなら排卵前は頸管粘液と呼ばれる液体が充満しており、卵子にたどりつきやすいようになっています。しかし排卵されると同時に、この頸管粘液は一気に減っていくのです。
つまり排卵1・2日前にはもう精子が到着していて、卵子が出てくるのを待っている状態が、もっとも妊娠しやすい状況になります。
危険日に中だしして妊娠する確率は?
危険日に中だししたとして、妊娠する確率は20代で30~50%です。30代以降はさらに低くなるでしょう。
そもそも健康的なカップルが1年間避妊せずにいたとしても、妊娠できる確率はそう高くありません。
【年代別妊娠率】
・20代:50%前後
・30代:30%前後
・40代:20%前後
・45歳以上:5%
想像より低いのではないでしょうか。なぜこんなにも低いかというと、着床がなかなかしないからです。
受精そのものは決してむずかしくありません。諸説ありますが、タイミングが合ったなら80%は受精すると言われています。しかしその受精卵が着床する確率が20%前後しかないのです。
妊娠を望む人にしてみれば心もとない数字ですが、今現在妊娠を望んでいないなら高い数字に見えるでしょう。
危険日は「生理周期」と「生理継続日」からある程度予想ができる
ほんとうは排卵の1・2日前ですが、危険日=排卵日だとしましょう。
さきほど『生理開始1日目でも妊娠の可能性はある』の章でも触れましたが、正解の排卵日は生理がきてからしかわかりません。しかし予想ならできます。
予想するのに必要な情報は、「生理周期」と「生理継続日」です。「毎月ピッタリ同じだ」なんて人は少ないと思いますが、安定していれば1・2日のズレしかないはず。
いくつか例を挙げてみましょう。
・生理周期:28日
・生理継続日:5日
・危険日予想:生理終了から9日目前後
・生理周期:31日
・生理継続日:7日
・危険日予想:生理終了から10日目前後
・生理周期:30日
・生理継続日:3日
・危険日予想:生理終了から13日目前後
これらはあくまでも予想です。「危険日を避けたからといってイコール安全日ではない」、この点はかならず覚えておいてください。
そもそも妊娠を望んでいないなら生・中だしでのセックスはおすすめしません。仮にするにしても、この危険日だけは避けるようにしましょう。
生でのセックスで避妊したければピルを使用する
避妊目的で使われるピルは、2種類ある低用量ピルの中でも「OC(Oral Contraceptives)」と呼ばれるものです。
(*もう1つは「LEP(Low dose Estrogen Progestin)」です。ただこちらはPMS(月経困難症)や子宮内膜症治療で使われるもの。不妊には関係あっても避妊とは関係ありません。)
正しく飲めば妊娠率は0.3%ほどしかなく、高い避妊率を誇ります。もし生でしたいなら、低用量ピルOCを飲めばほぼ妊娠の可能性はないでしょう。
OCにもいくつか種類がありますが、ほとんどは28日分で処方されます。これを毎日飲まねばなりません。1度でも飲み忘れると効果は変動します。
費用は1シート2,000円前後ですが、処方にはかならず医師の診断が必要です。個人輸入できるサイトもあるようですが、絶対に利用しないようにしましょう。
低用量ピルOCは脳に「妊娠している」と錯覚させるクスリ
低用量ピルOCには、黄体ホルモン・排卵ホルモンの2つが入っています。そのため定期的に飲み続けると、脳が「今妊娠している」と錯覚するのです。
すでに妊娠しているのなら、子宮内膜を厚くする必要はありません。排卵させる理由もないでしょう。だからこそ高い避妊率につながります。
ただ妊娠していると錯覚してしまうため、つわりにも似た副作用を感じる人が多いのも事実です。
【低用量ピルOCで考えられる副作用】
・嘔吐
・吐き気
・頭痛
・倦怠感
・胸の張り、など
重さには個人差がありますが、ゼロな人はごくわずか。高い避妊率はあるものの、ある程度の体調不良は覚悟せねばなりません。
妊娠はふせげても性感染症リスクはある
「ピルを飲んだから生でし放題・中だしし放題」と勘違いする人も多いでしょう。しかし低用量ピルOCで妊娠はふせげますが、性感染症はふせげません。
クラミジア・カンジダ・性器ヘルペスなどの有名な性病は、すべて生でするセックスでも感染します。避妊をしなくてもいいのは確かですが、だからといって病気になるのもイヤなはず。
本来であればコンドームとの併用をおすすめしたいところです。生でしても大丈夫だけれど病気のリスクはある、この点だけは覚えておきましょう。
その他避妊対策の避妊率、メリット・デメリットは?
99.7%と高い避妊率を誇ったピル以外にも、7つの避妊対策が考えられます。ここではそれぞれのメリット・デメリットとともに、気になる避妊率も紹介していきましょう。
中には医師の診断が必要なものや、数万円かかる高額なものもあります。「生でしたいから」でするにはなかなか勇気が必要だとは思いますが、しっかりとした避妊をしたい方にはうってつけの情報ですよ。
IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム・Intrauterine System)
避妊率 | 99.8% |
メリット | ・1度挿入すれば5年はもつ ・副作用がほとんどない ・男性の協力がいらない |
デメリット | ・医師の診断と施術が必要 ・費用が5万前後かかる ・1年に1回は診察が必要 |
IUSは、わかりやすく言うとピルの挿入版です。黄体ホルモンを発する器具(縦横がそれぞれ32㎜あるプラスチック製のT字型)を子宮内に装着します。
黄体ホルモンが出ているため「妊娠している」と錯覚させる点は同じですが、ピルのような副作用はほぼありません。ピルを飲むと血栓症のリスクがありますが、IUSならゼロです。
また1度挿入すれば、その効果は5年ととても長いのも特徴です。飲み忘れなども心配しなくて良いでしょう。もちろん器具をはずせば妊娠は可能です。
ただ5万円前後と高額な費用がかかるのと、1年に1回はメンテナンスで診察が必要なのがデメリットになるでしょう。
避妊(不妊)手術
避妊率 | 99.5% |
メリット | ・効果は半永久的 ・男性の協力がいらない |
デメリット | ・1泊程度の入院と手術代12万前後が必要 ・妊娠できる状態に戻すのがむずかしい |
避妊手術は、「卵管結紮術(らんかんけっさくじゅつ)」と呼ばれるものです。卵管をしばってしまうもので、排卵させないだけでなく、精子もたどりつけないようになります。
入院と手術は必要になりますが、その効果は半永久的。ごく稀にゆるむ・隙間から排卵してしまうなどの事例はありますが、それでも避妊率は99.5%と高めです。
ただしかかる費用は、避妊対策の中でダントツトップ。手術代で平均12万円前後かかりますし、その他診察・処方薬・1泊2日の入院と合わせて40万円以上請求される例もあります。
また妊娠を望んで結紮を解いてもらったとしても、なかなか妊娠しにくいのも事実です。経産婦が「もう子供はいらないから」でするのならまだしも、未婚の女性にはあまりおすすめできません。
IUD(子宮内避妊具・Intrauterine Device)
避妊率 | 99.4% |
メリット | ・効果は2年~5年もつ ・副作用がない ・男性の協力がいらない |
デメリット | ・費用が4万円前後かかる ・医師の診断と施術が必要になる ・1年に1回は診察が必要 |
IUDも、IUSと同じく子宮内に器具を装着する避妊法です。IUSは黄体ホルモンを発しましたが、IUDは銅イオンを発します。これにより受精・着床をふせぐのです。
1度装着すれば2年~5年と効果は長くもちますし、費用も4万円前後とIUSより安いのが特徴です。ただ装着中にズレるなどのトラブルも報告されているため、1年に1回は診察を受けましょう。
また黄体ホルモンで妊娠を錯覚させるわけではないため、排卵は通常通りおこなわれます。いくら受精・着床をふせぐといっても100%ではありません。そのためIUSより避妊率は99.4%と若干下がります。
とはいえ副作用もありませんし、取り外せば妊娠も可能です。海外でも多くの女性に支持されている避妊法なので、安全性は問題ないといえるでしょう。
緊急避妊薬(アフターピル)
避妊率 | 48時間以内で99.3% 72時間以内で98.4% |
メリット | ・1粒を1回飲むだけでいい ・避妊失敗後でも対処できる |
デメリット | ・医師の診断が必要 ・飲用後24時間ほどは副作用がでる可能性がある |
思わず生でするのを許してしまった・安全日を勘違いしていたなど、避妊に失敗したあとにできる唯一の対処法です。
以前はヤッペ法が主流でした。しかし避妊率が低い・2回飲む必要がある・副作用が強い、これらの理由で、今はほとんど使われていません。
今はほぼ100%でノルレボが採用されています。1粒を1度飲むだけでOKですし、避妊率も48時間以内なら99.3%と、高確率で妊娠をふせげます。72時間以内でも98.4%は避妊できるので、事後処理法としてとても優秀でしょう。
ただ飲んでから24時間以内は、吐き気・頭痛などの副作用がある可能性があります。24時間たっても治まらない場合は、すみやかに医師に相談しましょう。
男性用コンドーム
避妊率 | 98%~92% |
メリット | ・安価で手に入る ・性感染症を予防できる |
デメリット | ・男性の協力がいる ・使用法によって避妊率が大きく左右する |
みなさんご存知のコンドームです。ペニスにかぶせて、精子の侵入を物理的にふせぎます。
ただ破れる・脱着法を間違えるなどの理由で、避妊率は大きく変わります。たとえ正しく使用したとしても、その避妊率は92%しかないのが現状です。
安く気軽に手に入るのはメリットですが、中には避妊率が認められていないジョークグッズもあります。かならず裏面に「管理医療機器」と「医療機器承認番号」が記載されているものを選びましょう。
あとは男性の協力が必須なのがデメリットでしょうか。「ゴムをつけたがらないから生を希望される」なんて女性も多いでしょう。しかし性感染症予防でいえば、コンドームほど優秀なものはありません。彼にもそのポイントをプッシュしてみましょう。
リズム法(基礎体温法・オギノ式など)
避妊率 | 90%~76% |
メリット | ・お金がかからない ・自分の生理周期を把握できる |
デメリット | ・あくまでも予想にすぎない |
オギノ式は1924年に荻野久作医師が特定した予想法です。今回危険日予想などでも使用しました。「排卵は生理の14日前」と言ったやつですね。
基礎体温法は、婦人用体温計を使う方法です。毎朝寝起きに測って、排卵期を予想します。高温期にはいったタイミングで排卵し、高温期が終わると生理がきます。
これらはいずれも予想の域を超えません。また個人差も大きく出てきます。たとえば基礎体温を毎日測っても、高温期や低温期がハッキリ分かれない人もいるでしょう。
ストレスによって熱も排卵時期も変動するので、ここまで紹介した避妊法ほどの精密度はありません。ただ排卵の仕組みをしっかり理解しておけば予想精度はあがるので、知識として覚えて損はないですよ。
女性用コンドーム
避妊率 | 89%~73% |
メリット | ・女性の意思でできる ・性感染症がふせげる |
デメリット | ・単価が1個300円前後と高い ・装着ミスの可能性がある |
日本では認知度も低く、販売商品数もかなり少ないでしょう。女性の膣内に挿れる、コンドームより2回りほど大きい筒状のものです。材質はポリウレタンがほとんどで、男性用コンドームより3倍は頑丈にできているといいます。
ただ毎回使い捨てになるわりに、1個が300円前後ととても高価。また装着法にコツが必要で、ピストン中にズレてしまうケースも多くあります。あとは根本となる輪っかがオモテに出ているので、男性ウケは決して良くないかもしれません。
性感染症予防はできますが、コスパや避妊率を考えると微妙です。わざわざ女性用コンドームを選ぶくらいなら、リズム法の知識を覚えたほうが個人的には良いと思います。
安全日でも100%の避妊は不可能!生でするなら低用量ピルOCを飲もう
「今月は仕事が忙しい」、それだけで簡単に排卵時期はズレます。そのため安全日でも100%の避妊は不可能なのです。
ただ安全日の予想精度をあげたいなら、以下の4つのポイントだけでも覚えておくと便利でしょう。
【安全日を予想するための4つのポイント】
・卵子の寿命:12時間~24時間
・精子の寿命:2日~7日
・生理開始日から排卵日まで:人それぞれ
・排卵日から生理開始日まで:14日間
これさえ知っておけば、ある程度安全日と危険日は予想できます。
またどうしても生でしたいなら、低用量ピルOCがおすすめです。手間・コスパ・効果などを考えても、もっとも現実的な避妊法になります。
とはいえ妊娠を望んでいないなら、生でのセックスはしないに限ります。彼の願いよりも自分のカラダを優先し、後悔のないセックスを楽しみましょう。